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ちょっと大きい影と小さな2つの影が並んでいる。
その横に一際大きな影が寄り添うよう歩いている。
「ママ、どうして親父はパパって呼ぶと怒るの?」まだ幼さが残る言い方だ。
「光臣【みつおみ】、和哉はね、偏屈なのだから『仕方ないなぁ』って思ってつきあってあげてよ」
「偏屈?なぁにそれ?」光臣は私の手をしっかりと握りながら私の顔を見上げる。
「和哉みたいな人の事だよ」私はそう言って光臣に微笑む。
「栞、黙って聞いてれば何だよ。さっきからさ。俺は偏屈でも何でもなくてだな。ただ日本人として」
「ハイハイ。それは聞きあきたわよ。どうせアメリカ被れみたいに『パパ』って呼ばれたくないって言うんでしょ?」私は和哉の横顔にそう言う。
「解ってるなら偏見とか言うなよ」和哉は子供みたいに口を尖らせる。
「ねぇ~、和哉、ここはどこ?」
「えっと…」和哉はばつが悪そうな顔をする。
「ママ、雫【しずく】、解るよ」と光臣と和哉と手を繋ぐ雫が嬉しそうに言う。
「はい。雫ちゃん」私は雫を指名する。
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