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白く白く、覆われていく世界。
『…冷たい…』
生まれて初めて呟いた言葉は、酷く味気無くて。
それから2000年――私はずっと、独りだった。
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【空座総合病院】
真っ白な病室は、物々しい雰囲気に包まれていた。
星も瞬く静かな夜。雲一つ無い穏やかな空模様とは裏腹に、辺りにはピリピリとした緊張感と、悲壮感が漂っている。
一つのベッドを医師と数人の看護師が囲んでいた。
不意に、看護師の1人が振り返り
「先生、心室細動ですっ!」
緊急を告げるモニター音に、焦りを含んだ言葉が飛ぶ。それを受けて、医師は軽く眉根を寄せたまま告げた。
「DCを200でチャージ」
「はいっ…OKです」
指示に看護師は素早く答える。医師は頷くと手にした機器を患者に宛がい、スイッチを押した。
どんっ
重たい音と共に、患者の細い体が跳ねる。
ちらりと無言で看護師を見やる。しかし、その表情は焦燥に満ちていた。
「駄目です!」
「次、300」
冷静な医師の姿を遠巻きに見ていた女性が、不意に泣き崩れた。
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