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「心音微弱ですが、反応ありますっ!奇跡ですっ!」
「そんな…」
馬鹿な、と言いかけて言葉を飲み込んだ。
目を見開く竜弦の目の前で、患者の心音は徐々に強く、はっきりしてくる。そして胡桃色の瞳が、うっすらと開いた。
「ああ、神様…っ!」
感極まった母親がベッドに駆け寄り、娘の手をしっかりと握る。
看護師や他の医師たちが喜び会う中、竜弦は1人難しい表情のまま考え込んでいた。
【同刻・空座町上空】
「そっちに行ったぞ、一護!」
「分かってるって!」
逃げ回る虚を追いながら、2つの黒い影がビルの合間を疾駆する。
「このっ、ちょこまか逃げるんじゃ…ねえ!」
ドオォンッ
包丁にも似た、巨大な斬魄刀が振り下ろされるのと同時に、珍しく続いた追走劇は幕を閉じた。
「…やれやれ、思ったより時間がかかっちまったな」
溜め息をつきながら斬魄刀を仕舞うと、次いで上空から鋭い声が飛んだ。
「貴様がぼやぼやとしているからだろうが!このたわけが!」
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