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黙って先を促す白哉に、希紗は写真立てを愛しむ様に撫でながら話続ける。
ベッドで半身を起こし笑う自分に、泣き笑いの母、安堵する父。
その姿に、そっと目を閉じると笑った。
「私、生まれつき心臓に病気を持ってて…ずっと入院してたんです。その所為で学校も行けないし、友達もいなくて…。父も母も、そんな私を心配して、仕事の合間を縫ってはいつも側にいてくれました」
両親の事を思い出しているのか、希紗は嬉しそうな、それでいて何処か悲しそうな微妙な表情で笑っていた。
「二人の仕事が忙しいのは良く知っていました。私の入院費だって馬鹿にならないし…会社には社員さんだって沢山いるし…。そんな人たちの生活まで背負って働いている二人に、私、一杯迷惑を掛けて…」
医師からは完治は難しいと言われていた。それでも手術が可能であれば試したし、新薬が新たに開発されたと聞けば試した。そして、その度に幾度と無く絶望の淵に叩き落とされた。
「希紗…」
希望なんて無いと、諦め様とする希紗を両親はいつも励ましてくれた。
「趣味の時間どころか、休む時間だって十分に持てなかった筈なんです。いつも疲れてるのに、私の前では元気に振る舞って笑ってくれて…でも、私、それが苦しかった…」
両親の愛情だと分かっていても、と寂しげに俯く。
細い指が写真の中の両親を撫でる。
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