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ぽんと手を打ち、風呂場を案内する希紗に戸惑いつつ、白哉は小さく頷いた。
「それじゃ、白哉さん、ごゆっくり」
ニコッと笑うと希紗は蜂蜜色の髪を揺らして出ていく。
「……」
その背中を見送り、ひっそりと溜め息をついた。
聞きたい事はあった。だが問い掛ける機会を逸してしまったようだ。
僅かばかりの後悔を抱きながらも、取り敢えずは用意された風呂を享受すべく、白哉は脱衣場の扉を開けた。
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白哉が風呂に入っている間、希紗は父の部屋で着替えを漁りながら、先程の事を思い出していた。
「あー…何やってるんだろ、私…」
あんな話をするつもりは無かったのに、気が付けばペラペラと話していた。
「白哉さん、絶対呆れただろうなぁ…」
いや、寧ろ若干引いたかもしれない。ただでさえ、白哉も困難を抱えているというのに、まるで不幸比べの様に語ってしまった。
「はぁ~…」
口からは、つい溜め息ばかりが出てしまう。そんな中にありながらも、箪笥から父のシャツとトレーニングウェアを取り出すと、それを持って脱衣所に向かう。
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