謝謝口一ソン 異世界に立つ。

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謝謝口一ソン。 世界で一つしかないコンビニである。 ついでに読み方は、『シェイシェイこういちそん』であるが、近所の人は面倒くさいので、『ローソン』と呼ぶ。 そんな口一ソンでアルバイトをしているのが彼、新城くんである。 「うわやば、この火炎野郎、初っぱなからオーバーヒートとかテラ鬼畜」 現在彼は、コンビニのレジに立ち、今はやりの『歩家モソ・茶』を行っている。 新城くんの声は五月蝿いが、客は人っ子一人いない。 別に、品揃えが悪いわけではない。 いつもこの時間は、客がこないのだ。 「うわ、やべぇ、味方があと2体しかいねぇ、つか1体レベル10だわ」 ぶつぶつと独り言を言いながら、ポチポチとボタンを押す新城くん。 不意に、ガタガタと周囲が揺れ始めた。 「ん、なんだ?」 ゲーム機から一旦手を離し、チラリと辺りを見渡す。 夏のこの暑いのに、何故か売っているおでん。 70円均一セール中である。讃岐うどんも70円である。 そんなおでんのお汁が、目に見える程、揺れている。 「地震か?」 新城くんの呟き。 その直後、周囲の揺れは一段と大きくなり、店外からの強い光が覆った。 咄嗟に目を閉じた新城くん。 光は回転しながら、口一ソンを浮かび上がらせた。 おでんのお汁が零れる。 ―バシュンッ! 何かが弾ける音がして、やがて光は収まった。 しかし、口一ソンがあった場所、ソコには何もなく、ただ、零れたおでんのお汁が、小さな染みを作っていただけである。
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