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マンションの三階から階段を駆け降りる私。
緊張と激しい運動で心臓は千切れてしまいそう。
けれども。
私はその時、初めて知った。
本当に緊張すると、ヒトの心臓は動かなくなるんだ。
薄い灰色の舗装された道路に、赤い飛沫が撒き散らされたかのように花を開いている。
サイレン、鳴った。
私は既に混乱を始めていて、目に見える全てが波間にたゆたうように揺れる。
彼だ。
『天海治』だ。
彼のサイレン、彼の血痕。
それが何故かは解る筈もないけれど。
ただ、間違いない。
彼のサイレン、彼の血痕。
「どう、して……」
呻いた私に返事をするヒトは居ない。
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