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で、気が付いたら家に居た。
パスケースを握りしめたまま、ベッドの中で丸まっていたのだ。
勿論、どうやって戻ってきたのかなんて知らない。
ただ眠ることもできず、起きることもできない時間が過ぎていく。
時計が時間を刻む針の音。
私の脳を縫い針でさしているみたいに響く。
時折行き過ぎる、車のエンジン音。
私の心臓を吹き飛ばすかのように轟いてくる。
シーツも布団もとめどなく滲み出る汗で不快感を抱くほどに湿り気を帯びた。
そこに、ケータイの着信。
稲妻に貫かれたみたいに、私の身体が一瞬跳ねた。
「はっ……」
『はい』とも言えず、私は通話ボタンを押す。
嘘みたいに手がブレているせいで、余計なボタンを何回か押してしまい『ピー』とか『パポ』とかやけに耳障りな音がする。
『ちょっと、早瀬さん?!』
電話の声は、『最上苗』――
私とアマミハルを引き合わせた短大のクラスメイトだった。
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