真夜中

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分厚い雲も、寂しい星空も、二枚ガラスの窓もつんざいて耳に飛び込むのはサイレンの音。 それは空耳だけど…… 虫の知らせってヤツ。 部屋の電気を点けて、六畳間の隅に押し込んだベッドから跳ね起きると、直ぐに携帯が着信を告げた。 非通知。 通話ボタン。 低めで嗄れた、女の人の声。 「はい……はい……」 通話口から声が溢れ出すのと同時に、私はもう着替え始めていた。 慣れている、から。 電話の声にテンポ良く返事をしながら着替えを済ませて鍵を取る。 大股でフローリングを踏みつけると、化粧ポーチを蹴り上げるように足で引き寄せた。 通話終了。 と、同時に化粧ポーチを開く。 小さなミラーに一部分だけ映る、疲れた若い女。 それが私だ。 極簡単に化粧を済ませ、私は直ぐに独り暮らしのアパートを出た。
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