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私と彼は、幼馴染み。
中学生になるまでずっと一緒に登下校して、寝る時以外は傍にいた。
でも、彼は都会にある私立の中学へ進学して下宿が決まり、地元の公立に通う私とは会う機会が無くなった。
「大分、肝が据わりましたね」
電話と同じ、低めの嗄れた女の声。
白衣の、女。
彼の主治医だ。
「別れようとか、思わないのですか?」
「考える暇もなければ親も頼れないので」
「あなたらしいですね」
彼女は人を見透かしてる。
患者の彼だけでなく、私の心の奥底に溜まった澱みまで。
「命は勿論、意識もあるのでご心配なく……記念すべき五周年の始まりですね」
五周年というのは、彼と私が付き合い始めたのが丁度五年前だからだ。
診察の時に、彼が言ったらしい。
思えばその時にはもう、彼のペースに巻き込まれていたのだろう。
負の連鎖に。
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