5年前――マンション――

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友達は勿論いるけど…… 決して、他人に迷惑をかけるような人たちじゃないから。 きっとピンチが訪れたら何時でも身を挺してくれるし、してあげるけど。 それはもしもの話で、基本的には自立した関係だから。 『それ』は、埋められなかった。 そんなある日、新しいバイトを始めた。 クラスの子の紹介というか手伝いで。 「画家の卵の、アシスタント」 「私、絵とか解らないよ?」 「大丈夫、パシりみたいなもんだから」 若い画家の、食べ物やら画材やらを買い足すというバイト。 小綺麗なマンションの一室を激しく汚し、髪も服も絵具にまみれた細長い青年。 「新しい人、連れてきたので」 「えっ」 クラスの子は物珍しさにつられて始めたが、余りにコミュニケーションの図り辛い画家に嫌気がさしていたらしく。 私を人身御供にして逃げた。
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