十六歳の陸奥守

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「きっと大塔宮のお側にいたせいだろうな」 「あとは楠木正成(くすのき・まさしげ)殿ですな」 「私は楠木との間にどのようなものがあったかは知らぬ」 「楠木殿とは昨年の赤坂城でともに闘われております」 「それにしてもだ」 「左様でございますな たった一度戦を共にしたからと、凡人になにかわかるはずもありますまいが…」 そんな大人達の会話など全く興味がないようで、六の宮は嬉しそうに熱い湯を飲んでいる 「どうやら顕家殿は、京を発たれるときからすでに逆のことを考えておられたようです」 「逆?」 「多賀国府からの軍勢、西上でございます 軍行の速さ 兵の状態 移動に必要なもの… この旅で全てそれらを測りご自分のものとされています」 楠木正成は武士としてよくできた武士で、大胆な戦術をとりながらも命令には逆らわない 自らの分を心得ている
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