陸奥の武士

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びょうびょうと、谷間を風が抜ける みぞれが混じり始めてきた やがて樹木が哭き、空も哭きはじめる この時期は荒れはじめると翌朝まで続いてしまうが、それほど雪は降らないだろう ここは白河から約五里 谷合を縫うような街道を、切り立った崖上から見下ろしている ここ数年の都の騒ぎは陸奥にまで届いていた 今年の初夏に鎌倉幕府が倒れてから、白河を越え陸奥に入ってくる武士が増えた しかし今街道を抜けようとするのは逃げる北条残党ではなく、新任の陸奥守の軍勢で皇子も載いているようだ
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