十六歳の陸奥守

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輿から覗く景色は白銀である 昨日の夜中、雪がかなりの量降ったようだ だがいくら陸奥が寒いといっても十一月の雪は珍しいという もっとも、今は山中である。 北畠親房(きたはたけ・ちかふさ)は、六の宮を膝に抱き前後で並ぶ二つの輿の前の輿に乗っている 後ろの輿は今無人である 行軍は想像以上に速い 都を発つ時は輿などいらぬと見栄を張っては見せたが東海道の途中で馬から乗り換えた 鎌倉までさえ馬では行き着けられなかった 夜明けから日没までの早足での行軍だ。
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