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なんとか心を落ち着けた鬼男は若干痛む右手を摩りながら
「それで昨夜は言い合いで終わったんですか。ほんとアホだなオマエら。」
と眉間の皺を隠さぬまま笑顔で言い放った。
「良い笑顔で言うな!こっちは真剣なんだよ!」
「アホでしょうが。折角二人でいられる貴重な時間を、言い合いに費やすなんて。」
「そ、それはまあ…」
自覚はあるのか言葉に詰まったようだ。
「仕方ないからどっちか男らしい方が抱く側になるって決めたんだけど…」
「ああ、それで。砂袋を引きずって鍛えてるつもりだったと。」
つもりじゃなくて鍛えてたんだよ、見れば分かるだろ、と口を尖らせる姿に思わず鬼男は吹き出した。
「な、何が可笑しいんだよ!」
「はははっ!今日一日で鍛えた分が筋肉になるわけでもなし。それに相手を抱きたいが為にそうまでして躍起になるなんて…大王にしてみれば、そういう所が可愛いと思うんじゃないですか?」
そういえば大王も朝から空気椅子なんて始めて何の遊びかと思っていたけど、あっちも同じ事考えてたみたいですね、と意地悪い笑顔で言ってやる。
「最後に、一人称を私から俺に変えても男らしさは上がりませんよ、太子さん。」
むぅう…と赤い顔で恨めしそうに見る太子に、これくらいはさせてもらっても良い筈だと軽く手を上げて退散した。
慣れてみれば他人の恋愛事情も少しは楽しめるかもしれないと思いながら。
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