3人が本棚に入れています
本棚に追加
レイモンドが片峰重工の技術顧問として日本本社を訪れたのは一年前。
当時は他社との競合が激しく、片峰の業績は悪化を辿る一方だった。
片峰の主力商品が一世代前の型遅れの人型機動兵器。
それに比べて世界トップクラスの霧島財閥の系列重工は、最先端の機体開発だけではなく、軌道エレベーターの開発にも携わっていた。
そんな状況で成果を挙げられない研究員達は次々とリストラ通告を受けて会社を去っていった。
そんな仲間達から研究や実験の引き継ぎをしている中で、一人の男性研究員と出会った。
鬼崎盛時
年齢にして三十代だが、疲れた顔のせいか四十代後半に見えた。
他のリストラされた仲間と同じように研究成果を挙げられない盛時が、リストラを通告されるのは時間の問題だった・・・・・・筈だった・・・・・・
彼が変わったのは何時からだろうか。
レイモンドは詳しい時期を思い出せないが、明らかに変わっていたのだ。
変わらないのは死んだ魚のような瞳。
疲れた表情はなにかに憑かれたようにますます青白く染まっていた。
そんな風体とは真逆に、盛時は数々の発明を行い功績をあげ、いつしかリストラ候補から研究の重要ポストを任せられる存在に変わっていたのだ。
一体彼に何が起きたのか?
それと同時に、会社に勤務している研究員が相次いで失踪する怪事件が起きはじめていた。
レイモンドは確実に会社に異変が起きていると考えたが、どうしていいものかわからずに、楓に依頼することとなった。
ことのいきさつを二人に説明したレイモンド。
静かに聞いていた楓と正反対に、退屈そうに欠伸をしながら今にも寝そうになっているラクセリア。
これが本当に噂で聞く大聖霊なのだろうかと、レイモンドは内心疑問に感じつつも、決して口には出さなかった。
「話しはわかった。ところでお前に知恵を吹き込んだのは誰だ?」
最初のコメントを投稿しよう!