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意外な質問にレイモンドは動揺する。
しかし口止めされているわけでもないので隠し立てする必要はないのだが、やけに口にすることを躊躇った。
楓の射るような視線が次第に殺気じみてきていることに耐え切れず、
「名乗らなかったんだ。うちの会社に突然やってきて。とある財閥の令嬢としか知らない。あと警察組織を動かせる人物としか・・・・・・」
そこまで聞くと少年は納得したように相槌を打って、レイモンドから視線を外した。
恐らく言葉の信憑性を瞳と仕種で確認していたのだろう。
そう想像しただけでレイモンドはゾッとした。
「ところでこれから貴方達は?」
恐る恐る尋ねるレイモンドをよそ目に、ラクセリアは立ち上がって大きく背伸びした。
改めて見る少女の姿は、あまりの美しさに見とれてしまうほどだった。
「とりあえずタブレットの回収かな。私の目的はそれだし。楓の目的はどうかは知らないけど」
少女はそういうってそそくさと部屋を出ていってしまった。
「とりあえず依頼は依頼。報酬は前金で三百万円。指定の口座に振り込むこと」
「わ、わかりました」
楓は立ち上がって応接室のドアに手を掛け、
「それと、あんたに入れ知恵した奴に伝えておけ。次はあんたから金をとるとな」
そういうって部屋を出ていった。
レイモンド以外に誰もいなくなった部屋に静けさが戻る。
特に変わった様子はなかったが、先程の景色の残像が頭の中から離れないせいか、気味の悪い気分であることには変わらなかった。
今思えば、あの気味の悪い景色の中で、壁から顔を出していた人間に見覚えがあった。
失踪した研究員達・・・・・・
もし自分も巻き込まれたとしたら・・・・・・
身震いをしてレイモンドは応接室を足早に出ていった。
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