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何かに怯えている。
そう思える行動だったが、次の瞬間それが間違いだったことに少年は気づく。
「くっつく・・・・・・お腹が空き過ぎて、お腹と背中がくっつきそうなの!」
子供の様に地団駄を踏みながらラクセリアと呼ばれた少女は少年を睨んだ。
「実際にくっついていたのは図太い太股と無駄にでかい生産性の無い胸だろ」
間髪置かずに吐き出される少年の暴言。
癇癪を起こしたラクセリアは、華麗な身のこなしでソファーから飛び上がり少年に殴りかかった。
綺麗なラインを行く右拳のストレートだったが、少年はこれを軽々とかわし、ラクセリアの拳は空を切る。
「避けるな楓・・・・・・って動いたら余計にお腹が・・・・・・」
勢いのよかった動きも虚しく、ラクセリアはフラフラな足取りでソファーに向かい倒れこんだ。
哀れというべきラクセリアの行動を見ていた楓は、嘆息混じりに、
「今日は魚介類を使った猟師風パスタと、チーズグラタンと和風サラダだ」
「やったあ! お代わりできる?」
空腹で虚ろになっていた瞳に生気が戻ったラクセリアは、輝かせた瞳をパチクリとさせて楓を見た。
子供のように喜ぶラクセリアとは正反対に、終始無表情の楓は静かに頷き、
「多めに作る」
それ以上何も言わずにキッチンに入っていった。
暫くするとキッチンからは料理をする音が聞こえた。
少女にとって大好きな音であり、幸せを感じる時間でもあった。
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