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夕食を食べ終わってラクセリアは満足そうな表情でソファーに寄り掛かる。
楓がキッチンで洗い物を片付けている間、暇になった時間を埋める様にテレビのリモコンをとろうとした時だった。
テーブルの上に置かれたチラシや新聞に紛れ、珍しい封筒を目にする。
ピンク色の封筒からはいかにも《可愛いらしい》予感が漂い、ラクセリアはニンマリとした表情で封筒を手にとる。
楓がキッチンで洗い物を片付けているのを再度確認し、まるで悪戯っ子になった気分で楽しそうに封を切って中の手紙を出す。
内容を目にしたラクセリアは、読んで行くにつれて不機嫌そうな顔になり、しまいに読み終えてから急に発狂しはじめた。
「何なのよこれは! ラブレターでも何でもないじゃない! 大体封筒が紛らわしいのよ!」
可愛らしい封筒とは正反対に事務用便箋が使用されており、特に告白めいたことが書かれているというわけではなかったのだ。
「“好きです””愛してます“とかの手紙の一つもないわけ! どれだけモテない男なのよ!」
発狂するラクセリアの頭に瞬間的な衝撃が走る。
楓奥義がミリオンヒットしたのだ。
ラクセリアがおいたをした場合には度々炸裂するのが日常と化している。
じわりじわりと浸透する痛みに、頭を押さえるラクセリアは涙目で楓を睨むが、無表情の楓の瞳からは、残酷な程の冷たい視線を浴びせられ、
「言うべき言葉があるはずだ」
「うっさい能面野郎」
再び音速スリッパがギガヒットするがラクセリアは怯まない。
「レディの頭を何だと思ってるのよ! この唐変木!」
嘆息混じりに、楓はどこからともなく様々な拷問器具を持ち出して、
「言い残すことは?」
無表情ながらもどこか楽しそうにしている。
「・・・・・・ごめんなさい」
観念したラクセリアは手紙を差し出した。
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