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手紙の文面は依頼そのものだった。
コントラクター《請負人》を生業としている楓には日常的なものだった。
このように手紙での依頼の場合は、偽装はもちろん、ダイレクトにマンションに届くのではなく、様々な場所を経由して届けられる。
合法、非合法なものまであるのでこのような措置をとっているのだが、それを知らないラクセリアは今回のような行動を起こしたわけである。
そもそも手紙が足が付きやすいので滅多にない依頼方法なわけだが、それを気にしていられない程、依頼人は切迫した状況なのだと窺い知れた。
手紙の内容は最低限のことしか書かれていない。
《私の会社に勤めるとある男を調べて欲しい。調査結果によっては改めて依頼したいことがあります》
楓は手紙を最後まで読み終えると、灰皿に放り込みライターで火をつけた。
「引き受けるの?」
「さあな。この手の依頼は日常茶飯事だ。金額は抜きにしても、調査自体は探偵の仕事だ。相手が俺に何を請け負いさせたいかによる」
もっともらしい意見に、ラクセリアは退屈そうにしながら頷き、
「タブレット絡みだったら私も出番かな?」
「さあな。とりあえず明日顔を出してみるさ」
横浜の街を覆う夜の闇が不気味に感じられる。
ラクセリアは何処か不安を感じていた。
この街で何かが起きはじめている予感 が・・・・・・
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