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結局、情事が終わったのは夕方になってしまったみたいで。
当然だけど、意識を失う前まで感じていた温もりはふわりと消えていた。
上の空のまま、今誰といるんだろうなんて考えた。
フワフワとまだ綺羅の匂いが香るその指で指折り数える。
「…あれ、足りなくなった」
数える内に両手の指では足りないことに気が付いて、ギュッと胸が苦しくなる。
分かってた…ううん、俺はずっと理解してた振りをしてた?
大粒の涙がこぼれだして、止まらない。
何か笑えてしまう現実に直球して、指の関節が震えてしまう。
カッコ悪ぃー…今だけは鏡なんて是が非でも見たくない。
どうしたらこの虚しさは消えるんだろうと頭で考えてみるけど上手くまとまらない。
明日は仕事か─……もう一人の冷静な自分がそう一言嘆いて、溜め息を吐く。
一人ベッドに沈んだまま、僅かに残った余韻に惚けて俺は眠りについた。
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