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「それじゃあこれヤバイんちゃうんか?」
そう思うと身体が勝手に動いて、無意識に結衣の手を握って走り出した。
同時に全員全速力で走れ。と叫ぶとその言葉に反応するように走り出した。
走り出すが後ろから追いかけてくる気配は消えることなく追い掛けてきているのを感じるす
『お前何考えてんねん』
「何も考えてなんかないわ」
『じゃあ、これからどうするつもりや?』
「これ以上事態を悪化させたくない。ただそれだけや」
走りながら頭の中の自分と会話を交わすが何度も出会った黒い影を思い出す
走り続けるが変わらずずっと追いかけてくる気配にどうしたら良いのか苛立ちを覚えていると隣で誰かが立ち止まるのが見えた。
いったい誰が?と思い、走りながら後ろを振り返るとそれは……
「石田、お前……」
「先行ってください、ここは僕がどうにかします」
「どうにかするってどうするつも」
『やめろ、今戻ったら危険や。第三の闇が近付いてきてる』
石田を呼び止めようとする井本を頭の中で制止する声が聞こえた。
「じゃあどうしたらええねん」
『このまま逃げるしかないやろ』
「お前それって……」
「目には目を歯には歯を」
第三の闇には第三の闇でしょ。と告げると元来た道を戻っていった石田を横目にそのまま走り続ける
「……追いかけなくて良かったんか?」
何も言わない井上に問い掛けると一度決めたら反対しても折れないやつなんで、と答えながらもふと俺にも第三の闇がいたら呼び止めましたけど、と呟くのが聞こえた。
『どいつもこいつも無茶ばっかしやがるな』
「お前は黙れ」
『おー怖っ……でも俺の相手しててええんか?』
そんな忠告の直後目の前に気配を感じて急いで立ち止まる。するとそこには……
「お前は……」
その呟きに満足そうに笑みを浮かべる姿の輪郭がはっきりとしてくると結衣の表情が強張っていくのが分かり、結衣の口からお兄ちゃんと口にしたのを聞いて確信した。
「やぁ、久しぶりだな。結衣」
結衣を見つめて微笑む裕紀にさらに表情が強張る結衣は、裕紀の言葉に何の反応を見せずにただ裕紀から顔を逸らす
「つれないな、せっかくこうして再会出来たのに嬉しくないのか?」
一切表情を変えることなく、結衣に話し掛ける裕紀に顔を逸らしたまま聞こえないような声でそんな事思ってもないくせに……と呟く結衣を横目に眺める
『これは面白い展開になりそうやな』
「頼むから今は喋るな」
頭の中から聞こえた自分の声に向かって声を低くするも気にした様子もなく、頭の中で笑い声が響く
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