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「おい、いつまで寝てんだよ」
青野拓巳が電話を取ると受話器の奥で苛立った声が聞こえた。
昨日飲み過ぎたのと寝起きのせいで受話器の奥の声が頭にガンガン響いていた。
「おう、おはよう……」
拓巳はパンツ一丁でベッドに寝転がったまま、眠たそうに言った。
「おはようじゃねぇよ。何時だと思ってんだよ」
電話の相手は怒るというより呆れるという口調で話している。それも当然だった。
ベッドの上から手を伸ばし床に転がった時計を手に取って、時間を確認した。
「あ、十時半だ……」
「あ、じゃねぇよ。今日十時に集合て言ったじゃん」
「ごめん、すぐ行くわ」
「頼むよ。今日夕方からバイトだから」
「分かった」
拓巳は悪びれた感じもなくそう言うと携帯を切った。そしそのまましばらくボーっとした。拓巳の時間のルーズさは一級品だった。
その後もベッドに座り込みガラステーブルの上に置いてあるタバコを取って火をつけた。
昨日飲み過ぎたのとクーラーをかけっぱなしで寝たせいで体が重く感じた。六畳一間の狭い部屋は、趣味の悪いコバルトブルーのカーテンで光が遮られており、真夏の昼間とは思えないほど部屋の中は薄暗くなっているし、ジメジメしている。
拓巳はぐーっと背伸びをしてタバコを吸い、そして気持ち良さそうに煙草の煙を吐き出した。
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