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「あっ。そういえばそうだったような」 「それ俺らのだって言って拓ちゃん普通に受け取ったよ。拓ちゃんのじゃなかった?」 「いや……俺のだ。俺のというか俺らのだ。暁史の字汚くて特徴ないから分からなかった」 「そっか。なら今度マスターにお礼言っといて」 「分かった。それじゃあ」と、拓巳はそう言って電話を切った。  そして、何か閃いた様子で部屋の角に散乱しているプリント用紙をかき集めた。このプリント用紙は劇場から定期的に配られる用紙で出番の予定表やスケジュールが載っている物だった。もらって持って帰ってはすぐに部屋の角に置いていたのだ。  拓巳の部屋にメモ帳というものは存在しなかったので何かを書く時はだいたいプリント用紙の裏の白紙の部分だった。  拓巳は例のノートを開いて机に起き、書いてある内容をプリント用紙の裏に写し出した。急いでいたわけではないが、ノートの字よりも更に汚い文字だった。 「何してんの?」  暁史から催促の電話がかかった頃には十一時を回っていた。  ノートの内容を全て写し終え、一服した後、玄関で靴を履く所だった。とっさに「もうすぐ着く」と嘘を言い残し携帯を切った。  靴を履き、例のプリント用紙が入ったバッグを背負った拓巳は自転車で待ち合わせの公園に向かった。
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