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 自転車のペダルをこぎながら拓巳の胸は少し高鳴っていた。  あの例のノート。拓巳のでは無かった。もちろん暁史が書いた物でもない。昨日、和宏が差し出したので拓巳も酔っ払っていて訳も分からず受け取っただけなのだ。  ノートの内容は芸人が使う漫才やコントの設定やセリフが書かれたネタ帳だった。  ノートの中身を見た時、なぜこの誰のか分からないネタ帳がここにあるのかよりも、中身の内容に必死だった。  読み終わった後は一気に眠気も冷めていた。  見た事ないネタだった。何か突然閃いて思いつきで書いたような内容で、まだ完璧に完成されてはなかった。だが、斬新でセンス溢れるセリフが並べられていた。設定も新しく、今までにはなかった一つのパターンとして確立出来るような気までした。  もしかしたらこれを二人で練り上げたら凄く面白くなるんじゃないだろうか。  ノートを閉じて、表紙と裏を見たが名前など誰のか分かる手がかりは無かった。たぶん芸人が書いたものだろう。素人がこんなの書けるわけがない。
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