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 しかし、和宏も単なる忘れ物と言っていた。これを作った奴より先にネタを完成させて披露すればいいだけ。元々ネタに著作権などない。先にやったもん勝ちだ。勝負は明後日だ……  そんなことを考えながら拓巳は炎天下の元、蝉のうるさい鳴き声がする狭い路地を自転車で走ったのだった。 「遅すぎ……」  公園の屋根のあるベンチに座っている暁史は到着した拓巳に向かって呆れた表情で言った。 「わるいなぁ」と、いつもの様に平謝りして拓巳は暁史と石のテーブルを挟んだ向かいのベンチに腰をおろした。  公園は夏休みの昼間ということもあり、小さな子供達が遊具や砂場で遊んでいた。そんな中にポツンといる二十代後半の男性の二人組は公園に凄くミスマッチだった。 「ってかさ、ちょっとこれ見てみ」  拓巳は写し書きした例のプリント用紙を見せた。 「は?なにこれ?」  まだ今日の遅刻を許してない様子の暁史は不機嫌そうにプリント用紙を取った。 「そう怒んなって。新ネタだよ、新ネタ。オーディション用の」  得意げに拓巳は言った。 「いや、お前分かってる?オーディションは明後日だぞ?今から間に合うわけないじゃん」 「いいから読めって。それ書いてて遅れたんだよ」
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