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「お前!俺だってな、養成所で一年間勉強してきたんだよ。舞台も何回か立ってんだよ。しかも、俺がボケ担当だぞ。ネタの一つや二つくらい書けるわ」
拓巳は立ち上がってテーブルに手をつき暁史に言った。
「ごめんごめん、そう言う意味じゃなくて……」
暁史は宥めるように言った。
「発想というかセンスが俺らとちょっと違うじゃん。このネタはちょっとシュールな感じだし」
「だから?」
「俺らはべしゃりでやってきたじゃん。けど今更なんでこういうネタ思いついたのかなって思ってさ」
「面白かったらなんでもいいだろ」
そう言われた暁史は、
「うーん……」と考え込んだ。
「お前は真面目過ぎなんだって。自分ら流を意識し過ぎだって。まだこれからだし、いろいろとやってみようぜ」
「明後日のオーディションやるはずだったネタはどうするんだよ」
「こっちのネタでいこうぜ。こっちのがおもしろいだろ?」
「まあ、そうだけど」
実際に明後日するはずのネタは暁史が必死に考えた物だった。しかし、二人共稽古は積んで来たが、大爆笑を取れるかと聞かれればそこは自信を持って、はいとは答えれなかった。
「拓巳よりも俺の方がネタ考える才能があったって事だよ」
暁史は眉を細めてムッとした表情で拓巳を見た。
「本当に拓巳が書いたんだな」
「しつこいな」
「作家に頼んだんでもなく?」
「しつこい。俺らにネタ提供してくれる作家なんていないだろ」
「それもそうだな」と、暁史は言いつつも納得いかないような表情を浮かべた。
「なんだよ。俺はそんなに才能もセンスも無いのかよ?なんで信じないんだよ」
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