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「あります」  見事な二重奏が響き渡った。低音と高温のユニゾンはとても美しく響いた。此処が大聖堂の中ならば、神すら褒め称えるほどの見事さだ。  しかし、此処は大聖堂ではなく、ボロアパートの一室だった。  ラグエルはもう一度、溜息を洩らして項垂れている二人を見た。  肉体派を誇るレミエルはがっしりとした体格で長身の青年だ。髪は短く切り、整髪剤で後ろになでつけて立たせている。これがカッコイイと自分では思いこんでいた。  その隣に立つスレンダーだがスタイルのいい美女のラジエルはブロンドの髪を腰まで伸ばしているのが自慢だった。  椅子に座るラグエルはメガネを指で押し上げてもう一度溜息を洩らした。溜息を洩らすと幸せが逃げるとはだれが言ったのだろうか。  ラグエルはその長い足を組みかえて小首をかしげた。切れ長の瞳が怜悧さをうかがわせる。
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