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「幼い少年には酷過ぎると?」
「いくらなんでも早急過ぎると…」
「現実は、早くに教えておくべきだ。無知は身の破滅を招く事もある」
「校長!そうまでして急く必要があるのですか?」
聡明そうな老人は銀の光りを放つ目で其の男を睨めつける。有無を言わせぬ威圧感に男は口を紡ぐ。
「……判りました、彼に会い次第真実を語りましょう」
「それで良いのだマルセルク。直日が暮れる…行くがよい」
「仰せのままに…」
人々はこの世界を「ベルグランディ」と呼ぶ。魔術が一般視され、この世界に生きる人々は魔力を持って産まれる。
これは、ベルグランディと一人の少年と最高教育機関を取り巻く物語…そして、これは破滅と創成と運命が紡ぎだす戯曲の幕開け……
歯車は動き出し、不協和音を奏でだす…
「……」
古びた洋館、住人は少年唯一人。静寂と蝋燭の光りが辺りを包む。広間の円卓で彼は本を読んでいた。
「今晩は、ルーグス・アルベルタ君」
「誰ですか…?」
突然の来訪者に彼は驚く訳でもなく、飽くまで平静を保ち本を閉じる。
「私の名はマルセルク・アイリス…セントリウスで教頭と言う立場だ」
「『セントリウス』!?…本当に」」
「あぁ、本当だ。君に入学許可が下ったことを報告しに来た次第だ」
濡れたような黒髪に深い青の目の少年、ルーグスは彼の話に胸を踊らせる。
「どうだろう、この話をのむ気はないだろうか?」
マルセルクは人の良さそうな鳶色の目でルーグスを見詰める。
「それが事実なら、僕は喜んで入学します…!」
「それは良かった。私は明日またこの場所に来る…そうとなれば明日にも出発しなくてはならない…荷造りを手伝おう」
「…はい!」
「ではお休みルーグス…良い夢を」
腰まである茶色の髪を揺らし、マルセルクは暗闇に姿を消した。
ルーグスは急いでランプに火を点け、広間の扉の前で一度指を振り、全ての蝋燭の火を消す。
「 此は、現実だろうか… 」
寝室への階段を上りながら、一人呟く。寝台に横になると、ルーグスは直ぐに眠りについた。
翌朝、早めの朝食を済ませ、何時ものように魔術書を読むルーグス。一時間程経過した…誰かがノッカーで扉を叩く…彼は急いで階段を下り、術で重い扉を開け放つ。
「おはようルーグス、よく眠れたかい?」
「おはようございます教頭先生、おかげでよく眠れました」
「それは良かった」
「どうぞ、お茶を出しましょう」
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