姉と妹とパーソナリティ

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   照れ混じりの笑みは心からのものなのだろう。 嘘の無い、良い笑みだ。 この少女が誰かを死に至らしめたなど、とても考えられないが…… 「本当に……お姉ちゃんと私は大違いだったんです。 お姉ちゃんは私と違って……何でも器用に出来て……小さい頃にヴァイオリンの演奏会に選ばれたこともあったんですよ……」  桔梗にとって、本当に自慢の姉だったようだ。 その表情からは、姉である撫子への尊敬と情愛が感じられる。  心の底から敬愛し、心の底から信じている人間の表情だ。 姉妹の絆、というものが伝わってくる。 「私はいつも……いつも、お姉ちゃんの後ろを追いかけてばっかりで……全然……ちっとも……これっぽっちも成長しなくて……。 迷惑だったろうなぁ……お姉ちゃん」  散らばった破片を一つ手に取り、桔梗は遠い昔の記憶、遠い昔の思い出に視線を投げかけた。 もう戻ることの無い思い出に語りかけるように。  懐かしんでいるのか、それとも、戻らない現実を嘆いているのか、その瞳は様々な色が複雑に混じり合い、言い表せない色をしている。 「迷惑だなんて、そんなこと、無いと思うよ」  複雑な色に混ざったパレットに、そう呟いた優月の姿が映った。  
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