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紅茶を一気に飲み干すと、奏多はぬいぐるみを優月に渡しながら言う。 「え、あ、うん……」と優月は戸惑いがち。
確かにこれといった手掛かりは見つからなかったが、そんなあっさりと切り上げてよいものか。 と思ったが、奏多の表情を見てその考えは消えた。
奏多は、何か考えついた表情をしている。
それに気づいた優月も、「次の場所に行きましょ。 秋篠さん、ごちそうさま」と紅茶を飲み干した。
美味しい紅茶だった。 飲み干したところで、二人は挨拶もそこそこに部屋を出て行く。
その様子を、ポカンとした表情で桔梗が見送った。
「……お粗末さま……でした」
「で? なぁーにを考えてるの?」
隣を歩く少年に、探偵少女は訊ねた。
桔梗の部屋を出てから、二人は学園都市の街を歩いている。
突然だが、二人が所属する探偵部のキャッチフレーズは、『どんな依頼もハードボイルドに解決!』である。
探偵とはハードボイルドに生きる者のこと、とは優月の談。 事実、ハードボイルドと称される探偵は数多く存在する。
だが、
クマのぬいぐるみを抱きかかえて、男と並んで歩いているのをハードボイルドと言えるのだろうか?
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