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あれは悪魔だ❗しかも奴は俺の両親の顔をしている。
だがあれは両親じゃない。断じて…
それに気づいたのは 寒い冬のある真夜中の事だった。
眠るに眠れず起き上がるにも億劫で…ただベッドの中でもぞもぞとしていた。
…ふっと信じられないものを見た。
それは真っ赤に燃えている様な丸形の物体だった。精神を集中するとそれは目だと気付いた。
……その瞬間布団の中の温度が冷たくなるのを感じた。強者でならした俺だが それが人間の者でないと考える本能には勝つ筈もなかった。
俺は情けなくも震えが止まらなかった。じっと見つめているにもかまわず、それは近づいて来た。それで俺はそいつが何であるか理解した。
確かに両親だ❗
しかし違う…あの目が人の目である筈がない…
何より❗その笑みだ❗
親が示す慈愛に満ちた優しいものとは違いイヤらしい狂異の笑みなのだ…
彼らは俺が見ている事に気がつき声を発した。その声はどこか別の世界の音の様な酷い響を持っていた。かろうじて言葉を聞き取ることができた。そいつは言った。
『俺が見えるか?』
静かに頷いた。
『ほほぉっ…それはそれは…』
母の顔したやつが言った。父の顔した奴はクスクス笑ってやがる。
『夕べお前のおっかさんを喰った。そん前はおとっつぁんだった。今夜はお前の番だったのよ。』
今まで笑っていた父の顔した奴が今度は話す。
『じゃが今夜のところは止めてやろう。
だからといって逃げられると思うなよ。わしらもつまらんでなぁ。
なんでも上手く行き過ぎるのは……』
(そうか❗奴らは俺を道具にゲームを始めようとしてるのだ。)
俺は勇気を出して叫んだ。『お前たちはなんだ?』
『私達はお前さんたちの心じゃよ。正確にはお前さん達が理性と言うものでカバーしているものだ。』
そいつらは部屋から出ていきながら言っていた。
『お前さんの理性とやらがいつまで続くものかのぉ…楽しみじゃ…喰われてしまえば苦しみもないのにのぉ』
奴らに支配された人間は多い。彼らは見境なく人を殺している。暴力を振るう。
………俺は耐えられるだろうか??
{完}
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