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でも、認めたくなくて。
自分の中でそれを認めてしまったら、自分の存在理由がなくなる気がしていたから。
なんとか言い訳して、あいつのせいにしないと、やってられなかった。
自分は被害者だって、思いたくて。
それがなお一層、自分自身を追い詰める事にその時は気が付かなかった。
何を言ってももう遅いんだけど。
だって今、おれの足元に頃がっている男は何の力も持たない、ただの肉の塊なんだ。
あいつの身体から、だんだん体温が失われていくのが、おれの目にも明らかに解る。
おれが、どんなに努力してもかなわなかったあいつが、今、目の前で命と力をなくしていく。
同時に………。
不思議な感覚を、おれは感じていた。
あいつが、自分と同化していくような感じ。
あいつの身体から、魂が抜け出していくのを確認しながら、自分の心も肉体から持っていかれる様な気がしていた。
不思議な気分。
どうしてだろう。
随分とおかしな話かもしれないけど、幸せだったんだ。
やっとあいつと同じになれたって、どこかで感じてる。
その時、気付いた。
あぁ、おれはずっとこいつに憧れていたんだって。
こいつと同じになりたかった。
でもそれは、努力だけでは無理だったから。
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