15人が本棚に入れています
本棚に追加
感じたのだ。
二人の男を見た時。
自分に足りなかったものは、憎しみだったと。
憎しみを果たした男の喪失感、果たされた男の安堵感。
瞬時に理解した。
足りないものを補う吸収力は、凄まじい。
時として、憎しみが愛だとか恋だとかに名を変えて存在する事を、女は理性ではなく本能で嗅ぎ当てた。
すべての根源は、ここにあったのだと。
一度は手の中に握りしめた携帯電話を、コートのポケットに滑り落とす。
女は踵を反すと、ゆっくりと歩き出した。
聞こえるか聞こえないかの、囁きを残して。
……憎しみだけが人間を突き動かす、何にも勝る感情………
女の顔は美しく輝いていた。
多分。
今までになく美しく。
生き生きと。
最後まで読んで下さってありがとうございました〓
最初のコメントを投稿しよう!