銀のアスファルト1

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感じたのだ。 二人の男を見た時。 自分に足りなかったものは、憎しみだったと。 憎しみを果たした男の喪失感、果たされた男の安堵感。 瞬時に理解した。 足りないものを補う吸収力は、凄まじい。 時として、憎しみが愛だとか恋だとかに名を変えて存在する事を、女は理性ではなく本能で嗅ぎ当てた。 すべての根源は、ここにあったのだと。 一度は手の中に握りしめた携帯電話を、コートのポケットに滑り落とす。 女は踵を反すと、ゆっくりと歩き出した。 聞こえるか聞こえないかの、囁きを残して。 ……憎しみだけが人間を突き動かす、何にも勝る感情……… 女の顔は美しく輝いていた。 多分。 今までになく美しく。 生き生きと。 最後まで読んで下さってありがとうございました〓
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