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だからなのか……
おれはゆっくり、あいつの後をついていった。
雨が降っていて、襟首のあたりが気持ち悪く濡れていた。
いつもなら、雨に濡れたくらいでいらつく筈もないのに、どうしようもなく苛々していた。
原因はあいつ。
今日、部長に呼ばれて自主退社を勧告されたからだ。
あいつのミスをおれのせいだと勘違いしていた。
結構デカいミスで会社に与えた損害も小さくない。
だったら、事実を言ってやればいいだろって、思うかもしれない。
おれだって他のヤツだったら、そう忠告する。
だけど、だめなんだ。
おれは会社の為にこんなに頑張ってきたのに、そんなことも解らないのかって、変なプライドも手伝って。
自分が今まで何してたのか、情けなくなったりもして言葉が出てこなかった。
全部が全部、あいつのせいじゃないって思ってもいたしね。
ただ、あいつは黙ってただけ。
上司が重大な勘違いをしているって解った時に、あいつはただ黙って何も言わなかった。
おれが同じ立場なら、やっぱり何も言えなかったと思う。
企画だって、おれのを丸ごと盗んだんじゃない。
おれのちょっとしたアイデアから、到底おれなんかじゃ考えつかない、見事なものに仕上げていた。
解ってたんだ。
最初から。
おれはあいつには敵わないって……。
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