3721人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
「精霊……?」
その言葉の意味が理解できず俺は首を傾げる。
「そ、精霊。あなたも精霊でしょ?」
んなバカな……。俺はれっきとした人間だぞ。
だからそう、俺は狼などではない。
そう思ってた。いや、そう思いたかったんだ。
だけど俺は先ほど見てしまった。
腕を動かすつもりで動かしたものが前足が俺の視界に映り。
そして決定的な証拠に……少女の瞳に映っていたのは、一匹の真っ黒な狼が映っていた。
左目辺りに眼帯を着け、目を隠す狼はまるで………俺のようだった。
「どうしたの?」
少女の顔に釘付けになって動かない俺を心配した少女は、俺の目線に合わせるようにその場に座り込む。
「………」
言葉がでないとはこういうことだな。
狼となったことが今だ信じることができない自分がいる。
しかし俺は狼となったんだ。
その事実はしかと受け止めなければならない。
じゃないと俺はこの身体で生きてはいけないだろう。
「狼さん?」
「………咲夜だ」
「咲夜?」
意味がわからなかったのだろう。首を傾げながら俺を見る少女。
「俺の名前だ」
「そう♪よろしく咲夜。私はリフィって言うの」
リフィ……そう。それが少女の名前だった。
最初のコメントを投稿しよう!