1701人が本棚に入れています
本棚に追加
「…佐奈、もう会えない?」
「伊織がここに来てくれるなら、また会えるわ」
「ほんと?伊織来る!明日!」
「うん、明日なら大丈夫」
「じゃあ、また明日ね!約束!」
「約束するわ」
伊織は飛び跳ねて喜ぶ。
怪我に障らないかと心配していると、私にぎゅっと強く抱き着き、すぐに離れた。
「ばいばい佐奈!」
伊織は大きく手を振り、社の中へと入っていった。
私はそれをじっと見つめる。
あの向こう側に、きっと夜もいる。
私は一歩足を踏み出そうとして、辞めた。
…帰ろう。
おばあちゃんも心配してるわ。
私は踵を返し、重い足取りで山を下りていった。
***
「あ!佐奈ー!」
「伊織」
伊織が私を見付けるや否や、直ぐさま駆け寄ってきた。
昨日の傷が跡形もなく消えていることに気付き、私は驚いていた。
自己治癒力が全然違うのね…。
道理で昨日飛び跳ねてたわけだわ。
伊織は嬉しそうに笑いながら、私の手を握った。
「佐奈の手、冷たいね」
「伊織の手はとっても暖かいわ」
「そうなの?ニンゲンは皆冷たいの?」
「暖かい人もいるわ」
「ふーん。ニンゲンも色々?」
「そうね」
興味津々に人間のことを聞く伊織は、子供のように目を輝かせていた。
私達は地面に座り、木に背を預ける。
「…その…伊織は茶色い翼だけど、他にはどんな色の翼の人達がいるの?」
「うんとねー…白と、灰色と、緑かな」
「…黒、は?」
どうして黒がないんだろう。
私は首を傾げながら、尋ねる。
すると伊織は、えっと、と呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!