翼の人

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  「…佐奈、もう会えない?」 「伊織がここに来てくれるなら、また会えるわ」 「ほんと?伊織来る!明日!」 「うん、明日なら大丈夫」 「じゃあ、また明日ね!約束!」 「約束するわ」 伊織は飛び跳ねて喜ぶ。 怪我に障らないかと心配していると、私にぎゅっと強く抱き着き、すぐに離れた。 「ばいばい佐奈!」 伊織は大きく手を振り、社の中へと入っていった。 私はそれをじっと見つめる。 あの向こう側に、きっと夜もいる。 私は一歩足を踏み出そうとして、辞めた。 …帰ろう。 おばあちゃんも心配してるわ。 私は踵を返し、重い足取りで山を下りていった。 *** 「あ!佐奈ー!」 「伊織」 伊織が私を見付けるや否や、直ぐさま駆け寄ってきた。 昨日の傷が跡形もなく消えていることに気付き、私は驚いていた。 自己治癒力が全然違うのね…。 道理で昨日飛び跳ねてたわけだわ。 伊織は嬉しそうに笑いながら、私の手を握った。 「佐奈の手、冷たいね」 「伊織の手はとっても暖かいわ」 「そうなの?ニンゲンは皆冷たいの?」 「暖かい人もいるわ」 「ふーん。ニンゲンも色々?」 「そうね」 興味津々に人間のことを聞く伊織は、子供のように目を輝かせていた。 私達は地面に座り、木に背を預ける。 「…その…伊織は茶色い翼だけど、他にはどんな色の翼の人達がいるの?」 「うんとねー…白と、灰色と、緑かな」 「…黒、は?」 どうして黒がないんだろう。 私は首を傾げながら、尋ねる。 すると伊織は、えっと、と呟いた。
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