翼の人

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  「黒はちょっと…違うの。だから伊織たちとも住み処違う」 「…どう違うの?」 「考え方、とか。習慣とか…。黒の民…嫌い。憎い。伊織のお母さん、黒の民に殺された。他にもいっぱい、黒の民は殺す。伊織たちも、猫も狐も狸も、他の民もいっぱい」 「ど、どうして…?」 「わかんない。知らない」 伊織がふいっと顔を逸らす。 私は自分の心臓の鼓動が早まっていることに気づいた。 夜はそんなこと…しないよね? 私を助けてくれたんだもの。 夜は違う、きっと。 私はぎゅっと強く拳を握り締めた。 「…あのね、佐奈」 「な、何?」 「前から思ってたんだけど…佐奈、匂いがするの。まさか…誰かの羽根、持ってる…?」 「羽根?」 夜の羽根のことだろうか。 それなら確かに持っている。 今日だって紐で結んで首から下げて、服の中に閉まってあるのだ。 肌身離さず、大切に。 けれど黒の民を怨んでいる伊織に、それを見せていいのだろうか。 私は少し考え、首を横に振った。 「…持ってないよ?もしかして羽根をもっていたら、何かあるの?」 「えっ。うーん…内緒!」 伊織は楽しげに笑う。 私も微笑んだ。 …男の子にしておくには勿体ない気がするんだけどなぁ。 女の子だったらきっとすっごくモテると思うんだけど。 私がそんなことを思っていると、突然、大きな羽音が聞こえた。 顔を上げると、社の中から、茶色く長い髪を高く結い上げた女性が出て来た。 露出度の高い服を着ているため、女性だと断言出来る。 彼女は私に気付くと慌てて身構えたが、隣にいる伊織に気付き、目を見開いた。
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