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「かみさま、いませんか?かみさま、」
がく、と体が倒れる。
踏み出した先が崖だったのだ。
暗いせいでよく見えず、私は崖下に落ちてしまった。
「…い、た」
幸い崖は然程高くなく、頭と膝に擦り傷を負っただけで済んだ。
けれど痛みと恐怖で、私は大声を上げて泣きわめいた。
「いたいよー、こわいよー、さむいよー、おかあさぁん…!」
どんなに泣いても、誰も助けに来てはくれなかった。
その上、ただでさえ風が冷たいのに、突然雨も降り出してしまった。
雨を遮る物もなく、そこから動けない私は、凍えるような寒さに震えていた。
「おばあちゃん…おじいちゃん…ごめんなさい…ちゃんということ、きくから。だからたすけて…」
泣きながら、自分の小さな体を抱きしめる。
すると突然、誰かがこちらに歩いてきた。
私は顔をあげる。
そこには、真っ黒な服を着た、真っ黒な髪の青年が立っていた。
彼は私を見て優しく微笑む。
「…大丈夫?」
「う、ふえっ。うっ。うえーん」
私の前で膝をついた彼に、私は飛び付いた。
涙と鼻水を垂れ流しながら、私は彼の胸に顔を擦り付ける。
彼は私を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれた。
「よしよし、いい子だから泣くのはおよし。寒いなら暖めてあげよう。痛いなら撫でてあげよう。怖いのなら抱きしめてあげよう。だから、もう泣くのはおよし」
「…う、うん」
私は鼻を啜り、なんとか泣き止んだ。
すると彼は笑って何度も頭を撫でてくれた。
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