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「それが?」
「いや……僕も好きだよ、クラッシャーズの曲」
「あっそう」
由宇の言葉の端々に、爆発寸前のイライラが滲んでいる。チラチラと時計を見ている。
「…帰っていい? バンドの練習あるんだけど。遅刻しちゃうんだけど」
「あぁ、ごめんごめん。別にいいよ、帰ってくれて」
悟樹の言葉を最後まで聞かずに、由宇は教室を飛び出す。
と、由宇が走り去った後の床に、一枚の楽譜が落ちていた。
「……」
雑に書かれた反省文を机に置き、悟樹は楽譜を拾う。
さっき話題になった、クラッシャーズのギターの楽譜。
細かな書き込みが多く、裏側の隅には『ユウ』と小さく書かれている。
「…本当は嫌いだよ。クラッシャーズの曲なんて」
誰に言うでもなく、悟樹は吐き捨てるように言った。
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