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ダークブラウンのドアを開くと、ドアに取り付けられたベルが、かららん、と鳴った。
「いらっしゃいませー」
ベルに呼応するように、男性の声が返ってきた。店長と書かれた名札を首から下げた男性に、由宇は社交用の作り笑みを向ける。
「あの、私『空色カーニバル』の者なんですが」
「あぁ、第2スタジオだよ」
「ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げ、由宇は店の奥の階段に走る。地下一階に通じる階段を降りると、ほどなくドラムやベースの重低音が聞こえてきた。
短い廊下を挟んで向かい合わせのドアのうち、由宇は第2スタジオと貼り紙のあるドアをノック無しに開けた。
「あ、ユゥちゃん!」
「遅いよ~」
「15分遅刻だな」
大した広さもない板張りのスタジオには、3人の男女がいた。全員、由宇と大した年齢差はなさそうだ。
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