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ぴろりろり、ぴろろ~♪
クラッシャーズのヒット曲『アンブレラ』の着メロが、しんとした部屋に響く。
「はいはい、はい……」
やや面倒くさそうに悟樹は携帯を取り上げ、通話ボタンを押した。
「もしもし、悟樹ですけど?」
『あ、サト? 俺々、俺だけど』
「詐欺なら結構ですが」
『ちょっとぉ!』
電話をかけてきた若い男の声が憤慨した。
薄暗い室内で口元を緩め、悟樹は微笑む。
「……どうかしましたか、リュウさん」
『どうもこうも、サト、今ちょっと来れるか?』
「国内なら」
『駅前のコンビニだ』
「行けます。ちょっと待ってて下さい」
そう言って、悟樹は電話を切りかけ、
「あ、リュウさんの他に誰かいます?」
『他? あー、リオがいる』
「了解しました」
今度こそ切って、そのまま携帯をジーパンのポケットにねじ込んだ。黒いニット帽を被り、黒縁の伊達眼鏡を掛ける。
そして、洗面所の鏡を見て、
「変装完了」
そう呟くと、黒いブーツに足を突っ込み、ワンルームのマンションを出た。
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