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「お、早いじゃねぇか」
悟樹が天乃橋駅前のコンビニに着くと、そのドアの前には二人の青年の姿があった。
見たところ、二人とも大学生ぐらい。片方はパッションカラーのキャップを被り、その下には白に近しい金髪。
もう片方は悟樹と似ている黒いニット帽で、やや長めの黒髪が覗いている。二人揃って、同じデザインのサングラスをかけていた。
二人の姿は、人通りの多い駅前でも、やたらと目立っている。
「んで、一体何の用ですか、リュウさん」
悟樹が訊ねると、パッションカラーのキャップの青年、リュウこと笹川龍次郎(ささがわ・りゅうじろう)が口を開く。
「リオが、金がないから奢って欲しいって」
「俺じゃねぇよ、サト。奢れって言ってんのはリュウだ」
黒髪にニット帽の青年、リオこと一条橋李音(いちじょうばし・りおん)が、不服そうに首を横に振る。
それを聞いて、悟樹は困ったように笑った。
「高校生に奢らせるなんて、困った大学生ですね」
「本当だ、困った大学生だ」
悟樹に続けて他人事のように言った龍次郎の足を、李音が無言で思い切り踏んだ。
「いてぇ! リオ何しやがる!」
「俺は知らん」
ふいっと明後日の方を向く李音。余程痛かったらしく、龍次郎は仕返しに李音の頭に平手打ちをかますと、
「とにかく、サト、何か奢ってくれ。金は返すから」
悟樹に情けなく言った。
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