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コンビニでカゴを持つなり、龍次郎は手当たり次第にパンやカップ麺を投げ入れ始めた。
「食べれる範囲にして下さいよ」
そう言っている悟樹だが、その口調に咎めるようなものはない。
何も考えていない龍次郎とは違って、消費期限を見ながらパンを選んでいた李音が、ふと首を傾げた。
「サト」
「何ですか?」
「お前、さっき来た方向と寮の方向と、逆じゃなかったか?」
その問いに、悟樹は何でもなさそうに答えた。
「寮じゃなくて事務所から来たんで。ちなみに鞄とか置いてきちゃったんで、取りに戻らなきゃですね」
淡々と言ってから、悟樹はカゴの中を覗き込む。
「……リュウさん」
「あ?」
「後でお金返して下さい」
「え? 奢ってくれるんじゃなかったのかよ?」
「多すぎです。少しは遠慮ってのを知って下さい」
「けちー」
「けちで結構」
会計を済ませ、悟樹はレシートを龍次郎の手に押し付けた。
「さ、事務所に戻ろうか」
がさりと袋を揺らして、李音が言う。
李音に従うような格好で、三人がコンビニを出た数秒後。
「ねぇ、先輩」
「ん?」
レジ打ちをしているアルバイトの女子高生が、フライドチキンを加温器に並べていた先輩アルバイト店員に話しかけた。
「今の三人連れのお客さんなんですけど、先輩」
「うん」
「あの人達、あの……似てましたよね」
「似てたよね……」
客が少ないのをいいことに、二人は互いの思うところを囁き合い、
「「やっぱり!? やっぱりそうだよね(ですよね)!」」
キャアッ、と色めき立った。
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