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コンビニから徒歩数分のマンションの7階、さっきまで悟樹がいた部屋。
通称“事務所”。
李音が部屋の照明をつけると、雑然とした室内が照らされた。
床やローテーブルの上に散らかった、大量の楽譜とルーズリーフ。
ギターのピック。
CD。
ドラムスティック。
お菓子の袋。
「しっかし、まぁ……散らかってるな、いつ見ても」
いかにも他人事であるかのように言った龍次郎の足をまたもや踏みつけ、李音はソファーに腰を下ろした。
コンビニで買ったものを床に置いて、悟樹もソファーに座る。
「ちっくしょ……」
そう言いつつも、龍次郎も床の楽譜をどけてすわる。
ガサガサと袋を漁ってカレーパンを取り出すと乱雑に封を破って食らい付いた。
「よっぽど腹が減ってたとみえるね」
紙パックのジュースにストローを差しながら李音が言う。
一方の悟樹は、コーラ味のグミを咀嚼しながら、手元にルーズリーフとボールペンを引き寄せた。
「そういえば、新しい曲を考えてみたんですけど」
そう言いながら、ルーズリーフにシャーペンを走らせていく。
李音が覗き込み、
「おい、サト」
「何ですか?」
「お前さ、字が汚すぎる」
まるで判読出来ず、首を横に振った。龍次郎も覗き込むが、“みみずがのたくったような”という表現が生易しく聞こえるほどに汚い文字と記号が、罫線の間に羅列している。
「後で楽譜に打ち直しますから、それまで楽しみにしてて下さい」
楽しそうに言いながら、悟樹はシャーペンを走らせた。
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