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「そういえば、今日はマコトいないな」
李音の言葉に、悟樹が文字を綴るスピードが少し落ちた。
「マコト? どうせレポートの仕上げでもしてんだろ」
龍次郎がそう言うと、悟樹は肩を震わせて笑いだした。
「ははは、あっははは」
「何が可笑しいんだよ、サト」
「あはははは」
シャーペンを持つ手も震え、ただでさえ酷い字が判読不能の波線の集団に変貌していく。
李音が眉を寄せた。
「サト、字が」
「知ってますよ……あー可笑しい可笑しい……」
ひとしきり笑うと、悟樹はシャーペンを手から離し、グミを口に放り込んだ。
もぐもぐ、暫く噛んでから、悟樹はニヤリと笑う。
「マコトさん、今日はデートですよ」
「「デートぉ!?」」
龍次郎と李音が揃って叫んだ。
また悟樹が笑いこける。
「おいコラ、説明しろ」
龍次郎が悟樹の肩を掴む。
悟樹はまた楽しそうに言った。
「相手は男性ですよ? 同じ学部の先輩に、夕飯に誘われたらしいです」
そして、悪戯っぽい笑みを浮かべて付け足す。
「マコトさん、女顔で可愛いですもんね」
龍次郎は暫し絶句し、
「おい、リオ」
「ん?」
「サトってこんな奴だったか?」
「こんな奴だよ」
李音は何でもなさそうに笑った。
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