第二章、創造神と謳われし彼。

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ルーズリーフを鞄にしまい込み、悟樹は事務所を出た。 携帯電話で時刻を確認すると、22時。 「……ちょっと急ぐか」 ブーツの足音が、静かな夜道にただ響く。 近道をしようと、ビルの間の小道に入ると、月明かりが悟樹を静かに照らし出した。 「……あ」 不意に何かを思い出し、悟樹は鞄をまさぐる。 クリアファイルに挟んだ楽譜を引っ張り出し、その曲名を見て灰色の目を細めた。 『月明かり』。 由宇の落としていった、クラッシャーズのバラード。 「…………」 暫く、悟樹は無言で楽譜を眺めていた。 月明かりの中、白い紙の上に浮かび上がる黒字の歌詞と音符の群れ。 「……届けるかな、明日」 いかなる理由があろうとも、男子は女子寮に入れない。 悟樹は間違いなく男子なので、お邪魔する訳にはいかないのだ。 こつっ、こつっ。 ブーツの足音が、暗闇に響く。 こつっ、こつっ。 無音の世界。 こつっ、こつっ。 規則正しく、足音は響く。 こつっ、こつっ、こつっ。 「誰か、そこにいますね?」 そう、やや大きめの声で悟樹は言った。 「よく気づいたよね」 悟樹の声に呼応して、闇の中から影が現れた。
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