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闇から姿を現したのは、髪の長い少女だった。
由宇である。
「こんな夜中に出歩いて、また反省文書きたいのか?」
悟樹の問いかけに、由宇はクスクスと笑い声を漏らした。
「そんなこと言える立場? 風紀委員さん」
「あ」
そういえば悟樹も、同じ状態なのだった。
「ったく、髪は染めてる、カラコンは入れてる、挙げ句にタトゥーまで……」
「まさか、髪を見抜かれていたとはね。わざわざ焦げ茶色にしたんだけど」
「染めた髪は赤っぽい色になる」
そう言って、桔梗色の目を細める由宇。
今度は悟樹が笑みを浮かべた。
「神威さんも、カラコン入れてるんだろう?」
「あー、これ?」
自分の目を指し示し、由宇はまた笑い声を漏らす。
「私ね、クォーターなの。祖父がイギリス人でね」
悟樹が僅かに悔しそうな顔をしたのを、由宇は見逃さなかった。
「残念? 反省文書かせられなくって」
「別に。仕事が減ったから、嬉しいぐらいさ」
「あっそ」
「それじゃ、僕は──」
これで。
そう言おうとした悟樹の腕を、由宇が掴んだ。
「待って」
下手に抵抗すると吹っ飛ばされそうだ。
そう考えて、悟樹は振り向いた。
「何で、あんたは」
「え?」
「何であんたは、反省文とか書かなくていいのよ。カラコンに毛染めにタトゥーしてんのに?」
悟樹は目を細めた。
予想した質問とはいえ、あまり答えたくはない。
「……そんなに、知りたい?」
「知りたい」
「じゃあ、僕の部屋に来なよ」
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