第一章、破壊神と呼ばれし彼女。

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星渡学園。 中高一貫校、全寮制のこの学園には、ちょっとした有名人がいた。 星渡学園、高等部。 「だーりゃあ!!」 女子の大声と共に教室のドアが吹き飛び、同時に図体のでかい男子生徒が廊下に転がった。彼が起き上がるより先に、一人の女子生徒が教室から飛び出てくる。 「覚悟ォ!」 細い脚で蹴飛ばされ、男子生徒は転がっていく。 「もうあんな馬鹿馬鹿しいこと言うな!」 そう言って、女子生徒は教室に戻る。男子生徒は蹴られたショックか、それとも振られたショックか、ピクリとも動かない。 神威由宇(かむい・ゆう)。長く艶やかな黒髪と桔梗色の瞳を持つ、容姿端麗かつ文武両道の高等部の生徒だ。今は二年生五組。 容姿端麗な彼女のもとには、日々何人もの男子生徒が押し寄せる。ところが由宇は、今まで一度も交際に承諾したことはない。 それどころか、片想いの男子相手に殴る蹴るを繰り返す。普段が明るく優しいだけあって、その変貌ぶりにショックを受ける者も多いが、今や由宇に殴られることを目的に告白してくる者すらいるほどだ。 自分に言い寄ろうとする者には、容赦のない破壊攻撃をする由宇には、実に不名誉な二つ名がつけられている。 それ即ち───破壊神。
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